大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 平成7年(少ハ)400007号 決定

少年 N・O(昭50.1.18生)

主文

本人を平成7年10月16日まで中等少年院に継続して収容する。

理由

第1申請の要旨

本人は、平成6年6月17日、東京家庭裁判所で中等少年院送致の決定を受け、同年6月22日に茨城農芸学院に収容され、少年院法11条1項ただし書による収容継続がなされたものであるが、平成7年6月16日をもって収容期間が満了となる。

本人は、平成6年7月29日に2級の上、同年10月1日に1級の下に進級し、さらに、平成7年3月1日には処遇の最高段階である1級の上に進級して現在は出院準備教育過程の教育を受けている。しかし、本人は、物事に対して自信を持って積極的に取り組む姿勢や他人に対する思いやりのある態度、出院後の具体的な生活設計につき改善が十分になされたとはいえないし、明確な枠組みが無いと自分の判断や行動に自信が持てず、しかも行き詰まった事態に対してうまく援動を求められない状態にあるため、これらの点に関して、なお指導を要する。また、出院後の少年の帰住先については、実母を引受人として調整しているが、東京保護観察所作成の平成7年2月20日付け環境調整追報告書によれば、「受入可否未定」であり、「更生保護会への並行調整も必要」とのことである。したがって、今後、実母の許へ帰住するにせよ保護会に帰住するにせよ出院後の保護環境は必ずしも安定した状況にあるとはいえない。よって、本人に対して更に集中的な指導を行い、出院後も一定の指導を加える必要があるため、4か月間の収容継続を申請する。

第2当裁判所の判断

1  本件は、本人が、以前勤めていたホストパブの店長の使いで新宿でシンナーを10本ほど購入し、そのうちの1本を同店店長からもらい受け、それを単独で吸入した後、その残りのシンナーを吸入目的で所持していたという事案であって、本人は、平成6年6月17日、東京家庭裁判所で中等少年院送致の決定を受け、同年6月22日に茨城農芸学院に収容された。

2  本人の少年院内における生活態度はおおむね良好で、本人は、平成7年3月1日には処遇の最高段階である1級の上に進級している。その間、多少反省を求められる言動があったものの、本人は、まじめに勉強に取り組み、多くの資格を取得するとともに、対人関係の面でも成長がみられた。しかし、改善されてきたとはいえ、本人には、劣等感からくる背伸びした対応が未だ残っていること、他律的であり、枠組みを外部から与えられないと自信を持って物事に取り組む積極的な姿勢に出られないことなど今後も引き続き指導を要することが存在する。さらに、本人は、出院後の就職に不安を抱いていること、実母は当審判廷で本人を引き取る意思を明らかにしたが、しっかりした仕事がみつからないと再び本人が非行に走るのではないかとの不安がある旨述べており、出院後の生活に不安を持っていること、本人のこれまでの家庭環境などを考えると出院後も保護司などによる指導・援助の態勢が整っていることが本人の今後にとって好ましいことなどの事情が認められる。

これらの事情を総合考慮すると、本人が出院後に安定した社会生活ができるようにするためには、なお、指導期間を要するので、収容を継続すべきである。そして、本人は、平成7年6月16日をもって収容期間が満了となるところ、出院準備教育と保護観察の期間を含めて約4か月の期間が必要であると考えられるから、収容継続の期間は申請どおり平成7年10月16日までとするのが相当である。

3  よって、少年院法11条4項、少年審判規則55条により主文のとおり決定する。

(裁判官 市川大志)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例